この度、第64回日本消化器がん検診学会総会会長を拝命いたしました旭川医科大学内科学講座消化器内科学分野の藤谷幹浩です。どうぞよろしくお願い申し上げます。北海道での開催は、2009年度の第48回総会(会長:関谷千尋先生)以来、16年ぶりとなります。新型コロナウイルスのパンデミックを乗り越え、最近では学会活動がより一層活発になってまいりましたが、本会も対面での現地開催を主として、オンデマンド配信を追加する形式とさせて頂きました。多くの皆様に、春の北海道に、ご参集頂けますようお待ちいたしております。
第64回総会のテーマは「現行システムの最大活用と新規技術の実装へ向けて」とさせて頂きました。「現行システムの最大活用」とは、胃がん検診に端を発し、世界に先駆けて構築されてきた本邦の検診システムを最大限に活用することで、より多くのがん患者さんの救命に寄与したいという思いを込めたものです。本邦の検診システムにはたくさんの優れた点がありますが、二次検診の受診率の向上、リスク層別化による効率化、検査精度の維持・向上、次世代の検診従事者の育成など、様々な問題も抱えています。これを解決し、検診システムをより効果的に活用することによって、がん患者救命へ向けてさらに前進できるものと確信しています。また現時点では、検診で得られたビッグデータの活用は限定的で、個人の検診や診療の履歴は病院単位で管理されており、欧米諸国の横断的・縦断的な医療データ管理システムに比べると物足りない状況にあります。本学会では、「がん検診情報・研究推進室」が設立され、検診データの管理と医療・医学分野への応用が推進されつつあります。今後、行政との協力のもと、マイナンバー制度との連携などを含め、検診履歴にもとづいたリスク層別化や受診勧奨、さらには現行システムの有効性、費用対効果を含めた検診効率の評価と改善を進め、現在および未来のがん患者さんの救命に資するデータ活用が重要なテーマであると考えております。
「新規技術の実装へ向けて」とは、現在開発中のがんスクリーニングに関する先進技術を、今後の検診に実装したいという思いを込めたものです。先進技術には、AIを用いた自動画像診断、様々な体液中のバイオマーカーを指標にしたリキッドバイオプシー、腸内細菌叢の異常にもとづくがんリスク診断、さらには多数の身体情報を統合したオミックス解析によるリスク予想などが含まれます。これらの新技術については既に多くの先行研究が報告されており、その一部は治療薬の選択や効果の評価に臨床応用されています。また、米国では便DNA検査が大腸がん検診の手法として認められています。これらの新技術は、今ある癌の診断から未来に発生する癌の予測まで、広い意味でのがん予防に繋がる技術であり、近未来の検診に不可欠なものになると予想しております。
本総会では、以上のような観点を含め、広く消化器がん検診について議論を深めたく思っておりますので、是非とも多数のご参加、多数の演題ご応募をお待ちいたしております。
何卒、よろしくお願い申し上げます。