第53回日本潰瘍学会 会長
国際医療福祉大学病院 外科 教授 主任教授
吉田 昌
日本潰瘍学会の歴史を考えると、第53回日本潰瘍学会を開催する責任を強く・重く感じます。本学会は、実験潰瘍懇話会として設立された当初から、消化管の病態生理を含めた研究を推進してまいりました。これを、臨床医、基礎、企業の研究者が検討しあう、貴重な、唯一無二の機会を提供しています。臨床医は、研究データを見るとき、どのようなデザインで集められたデータなのかを考え、実験や治験そのものの誤差、個体差、前提条件などに深く考えを巡らせる必要があります。日常的にこのようなトレーニングを行っていないと、データを表面的にみるようになり、データが独り歩きをして本質から離れた形で利用されることがあります。会員の皆様は、コロナ禍で様々なデータが独り歩きをして利用されている様に、いら立ちを覚えたことがあったのではないかと思います。日本潰瘍学会にはこのようなトレーニングを提供する唯一無二の価値があり、これを次世代により良い形で提供してゆかなければなりません。
一方、今回の学術集会のテーマを「新たな地平を拓け」といたしました。これは、本学会設立者の一人であります、岡部進先生(京都薬科大学名誉教授)の、日本潰瘍学会50周年記念誌の座談会でのお言葉からいただきました。本学術集会では、外科からの情報、創傷治癒学との連携、皮膚潰瘍との対比といった新たな要素を積極的に取り入れてまいりたいと考えております。このテーマを考えるとき、同時に連想するのが、第45回日本潰瘍学会(内藤裕二会長)のテーマ “『なんでも呑み込む』潰瘍学” であります。是非とも、幅広いテーマの演題をお寄せいただき、多彩な学術集会にしていただきたいと願っております。皆様と熊本でお会いできることを楽しみにいたしております。