会長挨拶

第23回日本消化管学会教育講演会
順天堂大学大学院医学研究科人体病理病態学講座 教授
八尾 隆史

 この度第23回日本消化管学会教育講演会の会長を拝命いたしました順天堂大学大学院医学研究科人体病理病態学の八尾隆史です。GI Week 2025の構成学会のひとつである日本消化管学会教育講演会の会長を拝命いたしましたことを大変光栄に感じております。昨年は沖縄で多くの方々に現地に参加いただきたく対面とオンラインのハイブリッド開催といたしましたが、今回は東京開催でもありオンラインのみの開催といたしました。
 今回のテーマは「消化管診療における臨床と病理のマリアージュ」といたしました。消化管の診療においては病的状態がどのような機序で起こっているのかを病理学的に考察し、またその形態がどのような組織像を示しているかを理解する必要があると考えます。私自身がもともと内視鏡医として出発して病理学へ入門したのもこの重要性を感じていたからです。
 消化管癌の内視鏡診断は拡大内視鏡の発達により飛躍的に向上してきたが、内視鏡診断の質的診断の精度向上および治療方針決定に必要な範囲と深達度診断の判定のためには、内視鏡像の成り立ちを組織像と対応して理解する必要がある。そのためには内視鏡像と組織像のピンポイント1対1対応によりそのためには癌の発育進展を理解する必要がある。炎症性腸疾患では内視鏡像と組織像のピンポイント1対1対応は困難であるが、やはり病理組織像を理解した上で内視鏡像を理解することが鑑別診断において重要である。本企画の中心としては、消化管の種々の病変の内視鏡診断とそれらの組織像との対応を念頭において臨床と病理の両側面から講演していただきます。
 近年、虫垂腫瘍の疾患概念の変遷により組織学的分類が刷新され、それらの特徴が十分に周知されてないように思われます。そして、次回の大腸癌取扱い規約改定へ向けて、本邦からの新知見がいくつか発表されており、このタイミングで虫垂腫瘍の最新の分類と悪性度・予後に関して臨床と病理の両側面から講演していただき、分類の意義と診断法や治療方針についての理解を深めていただきたい。
 また、大腸癌治療において、新たに免疫チェックポイント阻害剤の使用されるようになったが、その適応においてマイクロサテライト不安定性(MSI)の確認が必要である。これを機会に大腸癌におけるMSIの意義も基礎的内容から臨床への応用の理解しておく必要があると思われます。
 今回の教育講演の企画で、臨床的知識と対応させた病理学的知識の習得により、消化管診療のレベルアップへ繋がることを期待しています。皆様のご参加を心からお待ち申し上げます。