会長挨拶

第19回日本消化管学会教育講演会
東京医科大学消化器内視鏡学 主任教授
河合 隆

 この度第19回日本消化管学会教育講演会の会長を拝命いたしました東京医科大学消化器内視鏡学分野の河合 隆です。伝統ある学会の教育講演会会長として大変光栄に存ずるとともに、身の引き締まる思いを感じております。本講演会は本会をGI Week 2023の学術集会の一つとして2023年2月5日(日)に完全オンライン開催いたします。またオンデマンド配信を予定しております。
 今回のテーマは、“消化管内視鏡診断・治療のムーブメントといたしました。食道から大腸までエキスパートな先生方にご講演いただきます。
 GERDの診療においてはこれまでPPIを中心とした薬物治療が主流でありましたが、本年より”内視鏡的逆流防止粘膜切除術(K653-6)が保険適応されました。良性疾患に対する内視鏡的治療の保険適応であり、多くの施設にて行われるようになることが予想されるため、その適応・手技・偶発症を含めてご講演いただきます。早期胃癌は、H.pylori現感染胃癌から既感染胃癌及びH.pylori未感染胃癌に変わっております。未感染胃癌では、胃底腺型胃癌(胃底腺型胃癌、胃底腺粘膜型胃癌)、腺窩上皮型高分化型胃癌(ラズベリー様腺窩上皮型胃癌、白色扁平隆起型胃癌)など新しいタイプの癌が報告されております。以上を踏まえて早期胃癌のスペクトラムのタイトルでお話いただきます。小腸領域では、近年増加している十二指腸腫瘍の内視鏡診断のアルゴリズムについてお話いただきます。大腸領域では、炎症性腸疾患の治療を大きく変えた生物学的製剤の一つであるベドリズマブに関してご講演いただきます。
 消化管(食道・胃・小腸・大腸)の内視鏡診断は容易でなく、内視鏡経験年数、内視鏡技術、内視鏡知識の程度により癌の診断率に大きな差が生じます。粘膜は凹凸、発赤や褪色の色調変化など多彩な所見を取り、典型例ばかりではなく、見逃し率も問題となっている。この問題の解決策の一つとしてAIを用いた内視鏡画像診断支援システムがあります。各部位別にAI診断の有用性と問題点を講演いただきます。最後に現在私たちの仕事から生活の全てに大きく影響を及ぼしているCOVID-19感染においてトピックスであるサイトカインストームと腸内細菌・代謝物に関して講演いただきます。いずれの講演も学会員、特に若手の学会員には参考になる内容であると考えています。
 日本をはじめ、世界的に新型コロナウイルス感染で、生活様式の変化と共に学術集会のあり方・開催方式も変わりつつあります。今回、通常開催は叶わず、WEBにて開催いたしますが、GI Week 2023で開催される他の学術集会とともに準備を進めて参ります。日本消化管学会の発展の一助となるべく、意義ある教育講演会としたいと考えております。役員・代議員の先生かたをはじめ会員の先生方のご協力のほどよろしくお願いいたします。皆様のご参加を心からお待ち申し上げます。