会長挨拶

 この度第48回日本潰瘍学会を担当させていただくことになりました兵庫医科大学消化器内科学の三輪洋人です。本学術集会は令和3年(2021年)2月20、21日の両日にGI Week 2021に参加する形で開催することになりました。
 消化管疾患の診療は21世紀に入って大きな転換期を迎えています。ヘリコバクター・ピロリの発見と治療法の確立は胃疾患の自然史をかえるほどの大きなインパクトがありました。2000年に消化性潰瘍患者に対するピロリ除菌が保険収載され、2013年からは慢性胃炎に対する除菌が解禁となりました。こうして最近では消化性潰瘍患者を診る機会はめっきり減り、ピロリが原因とされる胃がんさえも減少傾向に転じています。この潰瘍学会が研究の中心としてきた消化性潰瘍は臨床的にはピロリ除菌によりほぼ制圧された感があります。
 こうして今やポストピロリ時代に入ったわけですが、これで消化管の潰瘍学が終わったわけではありません。薬剤性消化管障害、炎症性腸疾患など、臨床的に極めて大きな話題が残されていますし、原因不明の消化管の粘膜障害に関しては疫学的なアプローチを含めて多くの課題が残されています。また臨床的、マクロ的だけではなく、微小血管障害や粘膜透過性などのミクロ的な視点から最新の技術を駆使して粘膜障害や微小潰瘍の発生機作へアプローチしていくことも必要です。本学会の強みである潰瘍学への基礎的なアプローチはさらに進歩させていかねばならないのです。
 このような想いから第48回潰瘍学会のテーマは「潰瘍学の新しい展開」としました。これまでの常識を打ち破る新しい発想で潰瘍の真の病態に迫る研究成果を発表していただければと願っています。GI Week構成学会としての参加は今回が初めてとなりますが、この気概で臨めば日本潰瘍学会はGI Weekの中でも一際輝きを発する学会となるのではないかと思っています。会員の先生方から多くのすぐれた演題の応募をお待ちしております。

2020年5月12日

第48回日本潰瘍学会会長
兵庫医科大学消化器内科学
三輪洋人